特徴

「ラート」というと日本ではまだ耳慣れない言葉ですが、世界、特にヨーロッパでは非常に人気のあるスポーツの一つです。
熟練者の高度な技術の演技とともに、身体・精神障害者に対するスポーツとしても行われ、ドイツ・オランダを含め18カ国の数々の障害者のための施設でも指導されています。また、子供から大人まで誰もが簡単に、三次元の回転ができるため、生涯スポーツとしても高く評価されています。

ラートパフォーマンスの様子

ラートの講習会の参加者と指導員

運動による身体的効果

腹筋・背筋などを締めて正しい姿勢を保つことが大切なポイントとなるので、姿勢の劣化が問題となっている子供たちへ推奨できる上、ぶらさがり健康法と同様の、血行促進、肩凝り・腰痛の予防、背骨の矯正、などがあげられます。見た目よりも、安全で運動量の多いラート運動は、運動不足の解消、シェイプアップ効果が期待され、女性の愛好者が増えています。
また、勇気を出して回転した喜びと達成感は、健常者だけでなく精神障害を持つ人にとっての自信となります。逆さまでの開放感はストレスの解消になる上、支援援助しあいながら技を習得するという過程において、良い人間関係が築かれていくこともメリットの一つです。

ラートの歴史

ラート運動は、ドイツ人のOtto Feickが、1925年に「子供の遊び道具」として考案しました。正式には、ルーンラート(Rhön Rad)と呼び(ルーン地方で考えられた輪という意味)日本では発音の難しさを避け、「ラート」と呼んでいます。ラートは遊具として、また競技としてドイツを中心に普及、発展してきています。第二次世界大戦により活動が中断されていましたが、西ドイツでは1960年に競技会が行われ、その後はドイツ体操連盟の傘下のもと、組織的な活動が続けられています。
日本では第二次世界大戦時に「フープ(操転器)」として航空操縦士養成の訓練活動に用いられていましたが、大戦後は一切姿を消してしまいました。その後、1989年、当時東海大学の講師であった長谷川聖修氏(現筑波大教授)が留学先のドイツから持ち帰り、ニュースポーツとして再び普及活動が始まり、現在は、小さな子ども達から障害を持つ人まで誰もがが楽しむことのできる生涯スポーツとして、また、国際大会で活躍する選手達の競技スポーツとして幅広く親しまれています。

競技概要

競技は3種目(直転・斜転・跳躍)から成り立ち、全ての種目は、男女別・個人別に行われています。現在、国内では年に1回の全日本選手権大会、全日本学生選手権大会、ジュニア大会、○○カップ大会(○○はその年の開催地名)を開催しています。
国外では世界選手権大会とチームカップ(国別団体戦)が開催されています。
採点方法は、満点(大会により異なる)からの減点方式です。直転と斜転の場合は実施点、構成点、難度点の合計、跳躍の場合は実施点と難度点の合計が最終得点となります。跳躍では2回の試技が行われ、高い方の得点が最終得点として採用されます。

2019年度世界ラートチームカップ日本代表選手団

2019年度世界ラートチームカップ表彰式

種目

【直転】

直転種目は、二本のリングを床に接地させて、車輪のように前後に回転をする種目です。
直転種目の回転運動の技術は、大きく分けると中心系運動と、周辺系運動の二つにわけられます。中心系運動とは、体がラートの中央に位置した状態でおこなう運動です。周辺系運動とは、体がラートの周辺、または外に位置した状態でおこなう運動です。

【斜転】

斜転種目は、どちらか一方のリングだけを床に接地させて、コインが円を描きながら転がる様に回転をする種目です。
斜転種目の回転運動を大きく分けると、大斜転の運動と小斜転の運動の二つにわけられます。大斜転とは、ラートの傾斜を60度以上にして回転をおこなう運動です。小斜転とは、ラートの傾斜を30度以下にして回転をおこなう運動です。

【跳躍】

跳躍種目は、転がしたラートに向かって短い助走をして跳び上がり、回転しているラートの上を越えたり、ラートの上に乗ってから跳び下りたりする種目です。
ラートの上を跳び越す際に行うのは支持転回などです。ラートの上から飛び降りる際に行うのは垂直跳びや宙返りなどです。

用具

使用するラートの円の直径は、身長により異なります。身長プラス35~45cm が目安です。
例)身長160cmの人:直径195〜205cmのラート
※小学校低学年以下の子どもであれば、身長プラス30~40cmが目安です。
ラート運動を行うためには、ステップと足を固定するベルト(ビンディング)が必要です。かかとサポート付補助ベルトと、競技会・認定会用ベルトの2種類があります。用具販売についてはこちら

様々なサイズのラート
ラート用ベルト
ラート用ベルト